「この手札、参加していいのかな…?」
「どのポジションから、どんなハンドでレイズすればいいのか分からない…」
ポーカーを始めたばかりのあなたが、最初にぶつかる大きな壁。それが「プリフロップでどのハンドで参加すべきか」という問題です。感覚だけで参加していると、不利な状況でばかり戦うことになり、あっという間にチップを失ってしまいます。
ポーカーには様々なポジションがありますが、すべてを一度に覚えるのは大変です。そこで今回は、UTGなど最初にアクションする「アーリーポジション(EP)」と、ポーカーで最も有利なポジションと言われる「ボタン(BTN)」という2つのポジションに絞って、参加すべきハンドの考え方を解説します。
この記事を読めば、なぜポジションによって戦い方を変えなければならないのかが明確に理解できるでしょう!
なぜハンドレンジを覚えることが重要なのか?
ハンドレンジとは、特定の状況でプレイすべき手札の範囲のことです。これを覚えることには、3つの大きなメリットがあります。
- ① 無駄な損失を減らせる:明らかに不利なハンドでの参加をなくし、チップの無駄遣いを防ぎます。
- ② 有利な状況で戦える:勝率の高いハンドで積極的にポットに参加することで、長期的な利益を最大化します。
- ③ プレイに一貫性が生まれる:その場の感情に流されず、常に理論に基づいた安定したプレイができるようになります。
ハンドレンジは、いわばポーカーにおける「定石」。まずはこの定石をしっかりと身につけることが、上達への第一歩なのです。
ハンドレンジ表の見方をマスターしよう!
これからポジションごとのハンドレンジ表を紹介しますが、まずはその見方を覚えましょう。表は13×13のマス目で構成されています。
- 対角線のペア (AA, KK, QQ…):同じ数字のカード2枚の組み合わせ。「ポケットペア」と呼ばれます。
- 右上エリア (AKs, KQsなど):数字が異なり、スート(マーク)が同じカードの組み合わせ。「スーテッドハンド」と呼ばれ、「s」で表されます。
- 左下エリア (AKo, KQoなど):数字が異なり、スートも異なるカードの組み合わせ。「オフスートハンド」と呼ばれ、「o」で表されます。
これから紹介する表では、参加すべきハンド(レイズすべきハンド)を「オレンジ色」で塗りつぶし、参加すべきでないハンド(フォールドすべきハンド)を「白」(塗りつぶし無し)で示しています。
【ポジション別】オープンレイズ・ハンドレンジ
それでは、オンラインポーカーのキャッシュゲームで最も一般的である『6人テーブル(6max)』、持ち点『100bb(ビッグブラインドという強制参加費の100倍の点数)』、アンティなしの状況を想定した、基本的なオープンレイズ・ハンドレンジを見ていきましょう。ポジションによって参加率が劇的に変わる点に注目してください。
アーリーポジション(EP)のハンドレンジ
アーリーポジション(EP)とは、6人テーブルにおけるUTG(アンダー・ザ・ガン)やHJ(ハイジャック)のように、最初にアクションすることが多い不利なポジションを指します。後にまだ多くのプレイヤーが控えているため、非常に慎重なハンド選択が求められます。
ここで参加が推奨されるのは、全ハンドのうち上位わずか14.33%。強いハンドに絞られた、非常にタイトなレンジで戦います。推奨されるレイズ額の目安は2.5bbです。
【アーリーポジション RFI (14.33%) ハンドレンジ表】

アーリーポジションのハンドレンジを見て、「A9o(オフスート)はフォールドなのに、なぜそれより数字の小さいA5s(スーテッド)が参加レンジに入っているの?」と疑問に思ったかもしれません。その感覚は非常に鋭いです。
結論から言うと、A5sが高く評価されるのは、単純なカードの強さ以上に、「ブロッカー効果」と「プレイのしやすさ」という2つの戦略的な価値が非常に高いからです。
理由①:相手の「最強の手」だけをブロックする絶妙な立ち位置
A5sが持つ「A」は、相手が持ちうる最強ハンドであるAAやAKの組み合わせを減らす効果(ブロッカー効果)があります。これにより、3ベット(リレイズ)のような反撃を受ける可能性を少し下げることができます。
ここからが重要です。A5sの「5」というカードは、相手がコールしてくるような強いハンドの範囲とはあまり関係がありません。一方で、例えばATsというハンドは、相手が持っているかもしれないTT(10のポケットペア)をブロックしてしまいます。TTは、相手があなたのレイズに対してコールできずにフォールドする可能性のあるハンドです。つまり、ATsは「相手に降りてほしかった手を、自分が持っているせいで消してしまっている」という状況が起こりうるのです。
A5sは、相手の強い手(AA, AK)は邪魔しつつ、相手に降りてほしい手は邪魔しないという、ブラフを仕掛ける上で非常に都合の良い性質を持っているのです。
理由②:フラッシュとストレートの両天秤(プレイのしやすさ)
A5sは、フロップ以降に非常に有利な状況を作り出す可能性を秘めています。
- ナッツフラッシュを狙える:スーテッドハンドなので、フロップでフラッシュドローになれば、完成した際に最強の役(ナッツ)になる可能性があります。
- ホイールストレートを狙える:「A-2-3-4-5」のストレートを作ることができます。このストレートは、相手のレンジと絡みにくい低いカードのボードで完成するため、相手が警戒しにくく、大きな利益につながることがあります。
このように、A5sは単純なハイカードの強さだけでなく、攻防一体の戦略的な価値を秘めたハンドであるがゆえに、タイトなアーリーポジションの参加レンジにさえ含まれているのです。
ボタン(BTN)のハンドレンジ
ボタン(BTN)はポーカーにおける「神の席」。フロップ以降、常に最後にアクションできるという絶対的なポジションの有利性を活かし、戦う機会を最大限に広げることができます。
アーリーポジションとは対照的に、実に41.48%という非常に広いハンドで積極的に参加し、ブラインドを奪いに行く「スチール」を仕掛けていきます。推奨レイズ額の目安は2.5bbですが、少し小さい2.2bbなどで仕掛けるのも有効な戦術です。
【ボタン RFI (41.48%) ハンドレンジ表】

まとめ:両極端を制する者がポーカーを制す
今回、最もタイトな「アーリーポジション」と、最もルース(ゆるい)な「ボタン」という両極端の戦略を見てきました。その参加率には約3倍もの差があることに驚かれたかもしれません。
- 不利なアーリーポジションではタイトにプレイし損失を防ぐ。
- 有利なボタンからは積極的にポットを奪いに行く。
この2つのポジションの考え方をマスターするだけで、あなたのポーカーは劇的に変わります。まずはこの両極端を意識してプレイし、ポジションの重要性を体で感じてみてください。
しかし、あなたが正しいレンジでレイズしても、他のプレイヤーから「3ベット(リレイズ)」という反撃を受けることがあります。
次の記事では、このレイズに対する反撃にどう立ち向かうか、ディフェンスの戦略について解説します。攻めと守りの両輪を揃えて、盤石なプリフロップ戦略を完成させましょう。お楽しみに!