「よし、強いハンドが来たからレイズで参加だ!」…と思ったのも束の間、他のプレイヤーからさらに大きなレイズ(リレイズ)が飛んできて、どうしていいか分からなくなった…。
ポーカーをプレイしていると、こんな風に相手の攻撃的な「3ベット」に頭を悩ませる場面は必ず訪れます。プリフロップでレイズして参加する「レイズorフォールド戦略」を覚えたあなたの、次の壁がこの3ベットです。
「一体どんなハンドで3ベットすればいいの?」
「3ベットされたら、コール?フォールド?それとも…?」
その悩み、この記事が解決します。この記事を読めば、あなたはもう3ベットを恐れる側ではなく、3ベットを強力な武器として使いこなし、プリフロップの主導権を積極的に奪い返すプレイヤーへと進化できるはずです。この記事を読み終える頃には、「3ベットされたらどうしよう…」という不安は、「どのハンドで3ベットして相手を降ろそうか?」という戦略的な楽しみに変わっているでしょう。
そもそも「3ベット」とは?なぜ重要なのか?
まず、言葉の定義からおさらいしましょう。ポーカーでは、プリフロップでの最初のレイズを「2ベット」と呼びます。したがって、そのレイズに対してさらにレイズし返すアクションが「3ベット」となります。
この3ベットは、単に賭け金を上げるだけのアクションではありません。そこには、ゲームを支配するための3つの重要な目的が隠されています。
- ポットを大きくする:AAやKKのようなプレミアムハンドを持っているとき、プリフロップの段階でポットを大きくしておくことで、最終的に得られる利益を最大化できます。
- 主導権を握る:あなたが3ベットすることで、プリフロップでの最後のアグレッサーとなり、フロップ以降の主導権を握ることができます。 これにより、たとえフロップで役が完成しなくても、Cベット(コンティニュエーションベット)でポットを獲得できるチャンスが生まれます。
- 相手を孤立させる(アイソレート):最初にレイズしたプレイヤーと、そのプレイヤーにコールしたプレイヤーがいる状況で3ベット(スクイーズ)をすると、多人数参加になるのを防ぎ、より有利なヘッズアップ(一対一)の状況を作り出すことができます。
3ベットの両輪:「バリュー」と「ブラフ」の使い分け
では、具体的にどんなハンドで3ベットすれば良いのでしょうか?GTO(Game Theory Optimalの略。ゲーム理論に基づいた最適なプレイ戦略のこと)に基づいた考え方では、3ベットレンジは主に2つの要素で構成されます。
① バリュー3ベット:最強のハンドで利益を最大化する
これは3ベットの基本です。相手のオープンレイズレンジやコールしてくるレンジに対して、明らかにエクイティ(自分のハンドが勝つ確率のこと)が高いハンドで3ベットします。目的は、相手の弱いハンドから最大限のバリューを引き出すことです。
- 代表的なハンド: AA, KK, QQ, AKs, AKo
これらのプレミアムハンドでただコールするだけでは、ポットを大きくする絶好の機会を逃してしまいます。強気に3ベットすることで、ポットを膨らませ、相手が降りにくくなる状況を作り出すのです。
② ブラフ3ベット:相手を降ろしてポットを奪う
もしあなたがバリューハンドでしか3ベットしないとどうなるでしょう?賢い相手はすぐにあなたの手の内を見抜き、あなたが3ベットしてきた瞬間にプレミアムハンド以外はすべてフォールドしてしまいます。 これでは、あなたの強いハンドから十分な利益を得られません。
そこで重要になるのが「ブラフ3ベット」です。バリューハンドではないハンドでも3ベットすることで、相手にあなたのハンドを読ませず、結果的にバリューハンドでより多くのチップを獲得できるようになります。 また、相手をフォールドさせてポットを直接奪うこともできます。
では、どんなハンドがブラフ3ベットに適しているのでしょうか?鍵は「ブロッカー効果」にあります。
ブロッカー効果とは?
自分が特定のカードを持っていることで、相手がそのカードを含むハンドを持っている可能性を減らす効果のことです。 例えば、あなたがA(エース)を持っていると、相手がAAやAKといった強いハンドを持っている可能性は低くなります。
このブロッカー効果を考えると、ブラフ3ベットには以下のようなハンドが適しています。
- Axs (A5s, A4sなど): 相手の最強バリューハンドであるAAやAKをブロックできるため、相手が強いハンドを持っている確率を下げることができます。
- Kxs (KQs, KJsなど): 相手のKK, AK, KQといったハンドをブロックできます。
- スーテッドコネクター (87s, 76sなど): ポストフロップでのプレイアビリティが高く、フラッシュやストレートといった強い役に化ける可能性があります。
これらのハンドは、単体ではそこまで強くありませんが、「相手の強いハンドの可能性を減らしつつ、コールされても戦える可能性がある」という点で、ブラフ3ベットに最適な候補となるのです。
じゃあ、いくらレイズすればいいの?3ベットの基本サイズ
3ベットの強さを最大限に活かすには、適切なサイズでレイズすることが重要です。一般的には、ポジションに応じてサイズを調整します。
- インポジション(IP)の場合:相手のレイズ額の3倍〜3.5倍が目安です。フロップ以降で有利なポジションからプレイできるため、少し小さめのサイズでも十分に戦えます。
- アウトオブポジション(OOP)の場合:相手のレイズ額の4倍〜4.5倍が目安です。不利なポジションを補うため、プリフロップの段階で相手を降ろしにいくインセンティブが強く働き、より大きなサイズを使います。
まずはこの基本サイズを覚えて、次のポジション別戦略に進みましょう。
ポジションで全く変わる!3ベット戦略の実践
3ベット戦略は、あなたのポジションによって大きく変わります。ここでは代表的な2つのパターンを見ていきましょう。
インポジション(IP)からの3ベット:BTN vs CO
あなたはBTN(ボタン)にいて、CO(カットオフ)のプレイヤーがオープンレイズしてきました。あなたにはポジションという絶対的な優位性があります。
この場合、あなたは3ベットだけでなく「コール」という強力な選択肢も持っています。そのため、3ベットレンジは「ポラライズド(二極化)」させるのが基本戦略です。つまり、非常に強いバリューハンドと、ポストフロップで有利に戦える可能性を秘めたブラフハンドで3ベットするのです。
中程度の強さのハンド(ミドルポケットペアやスーテッドブロードウェイなど)は、ポジションを活かしてコールし、ポストフロップで勝負します。
アウトオブポジション(OOP)からの3ベット:BB vs BTN
あなたはBB(ビッグブラインド)にいて、BTN(ボタン)のプレイヤーがオープンレイズしてきました。あなたにはポジションがなく、ポストフロップでは常に不利な状況で戦うことになります。
この不利を解消するため、OOPからの3ベットはよりアグレッシブに行われます。相手にコールされてポストフロップを戦うよりも、プリフロップの段階でポットを獲得してしまうインセンティブが強く働くからです。そのため、IPの時よりも3ベット頻度は高くなり、レンジも「リニア(強いハンドから順に)」に近い構成になります
強いハンドでポットを膨らませるのはもちろん、中程度の強さのハンドでも3ベットして、BTNの広いオープンレンジをフォールドさせることを狙います。
【発展編】3ベットされたらどうする?4ベットの基本
最後に、あなたがオープンレイズして3ベットされた側の基本的な考え方です。選択肢は「フォールド」「コール」「4ベット」の3つ。
4ベット(3ベットに対するリレイズ)の考え方も、3ベットと似ています。あなたの4ベットレンジもまた、バリューとブラフで構成されるポラライズドレンジになります。
- バリュー4ベット:相手の3ベットレンジに勝っている最強クラスのハンド(AA, KK, AKsなど)で行います。
- ブラフ4ベット:相手のバリュー3ベット(AA, KK, AKなど)をブロックしているAxs(A5sなど)が最適な候補になります。相手に「自分はAAを持っているぞ」と思わせ、AKなどをフォールドさせることが狙いです。
- コール:4ベットするには弱いが、フォールドするには強すぎるハンド(AQ, AJ, KQ, ミドルポケットペアなど)でコールします。 ポストフロップで戦える見込みがあるハンドです。
【初心者向け】明日から試せる!3ベット実践3ステップ
理論は分かったけど、いきなり全部やるのは難しい…と感じるかもしれません。ご安心ください。まずは以下の3ステップで、少しずつ3ベットをあなたの武器にしていきましょう。
ステップ1:バリュー3ベットだけを完璧にする
まずはポジションに関わらず、「QQ, KK, AA, AK」が来たら必ず3ベットすると決めましょう。ブラフのことは一旦忘れてOKです。強いハンドでしっかりポットを大きくする感覚を掴んでください。
ステップ2:BTN(ボタン)からブラフを試す
ステップ1に慣れたら、最も有利なポジションであるBTNにいる時限定で、ブラフ3ベットを試してみましょう。まずは「A5s(エースと5のスーテッド)」だけを追加します。Aが相手の強いハンドをブロックする「ブロッカー効果」を体感できるはずです。
ステップ3:BB(ビッグブラインド)から守りの3ベット
最後に、不利なポジションであるBBからBTNにレイズされた時の3ベットです。ここでは「TT(10のポケットペア), JJ(ジャックのポケットペア), AQ」のような「まあまあ強いハンド」でも3ベットしてみましょう。相手を降ろしてポットを奪う感覚を養います。
この3ステップをクリアする頃には、3ベットへの恐怖心は消えているはずです。
まとめ:3ベットを制する者がプリフロップを制す
プリフロップでの受け身なプレイから脱却し、ゲームの主導権を握るための「3ベット」。今回の要点を振り返りましょう。
- 3ベットは主導権を握るための攻撃的なアクション。
- レンジは「バリュー」と「ブラフ」で構成し、相手にハンドを読ませない。
- ブラフには「ブロッカー効果」のあるハンド(Axs, Kxsなど)が最適。
- IPとOOPで戦略は大きく変わる。IPはよりポラライズ、OOPはよりアグレッシブに。
3ベットは、単なるリレイズではありません。それは、あなたのポーカーIQの高さを示す、計算され尽くした戦略的アクションです。最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは「なぜこのハンドで3ベットするのか?」という理由を一つ一つ考えながらプレイしてみてください。その積み重ねが、あなたをカモにされる側から、カモにする側へと変えてくれるはずです。
3ベットに関するQ&A
Q1. 3ベットしたらコールされました。フロップではどうすればいいですか?
A1. あなたはプリフロップで最後にレイズした「アグレッサー」なので、基本的にはCベット(コンティニュエーションベット)を打ちましょう。Cベット戦略については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Q2. 3ベットの頻度はどれくらいが適切ですか?
A2. ポジションや相手によりますが、全体の7%〜10%程度が一般的な目安です。ただし、最初は数字を気にするより、「なぜこのハンドで3ベットするのか」という根拠を考えることが重要です。