「強いハンドで参加したはずなのに、気づいたら相手のペースでポットが膨らんで負けてしまった…」
「フロップが開いた後、どうアクションしていいか分からず、いつも後手に回ってしまう…」
ポーカーを始めたばかりのあなたがそんな悩みを抱えているなら、その原因は配られたカードの良し悪しではないかもしれません。実は、あなたの「ポジション(テーブルでの席順)」が、勝敗を大きく左右している可能性があるのです。
「席順なんて、ただアクションする順番が違うだけでしょ?」もしそう思っているなら、この記事があなたのポーカー観を根底から変えることになるでしょう。ポジションの力を理解し、使いこなすことは、ポーカーで長期的に勝ち続けるための絶対必須スキルです。
この記事を読めば、なぜ席順がこれほどまでに重要なのか、その理論的な理由と、明日からのあなたのプレイを劇的に変える具体的な戦い方が分かります。
第1章:ポーカーにおける「ポジション」とは?有利・不利はここで決まる
ポーカーにおけるポジションとは、ディーラーボタンを基準とした各プレイヤーの席順のことです。この席順によって、フロップ以降にアクションを行う順番が決まります。
ポジションは大きく2種類に分けられます。
- インポジション(IP):相手よりも後からアクションできる有利なポジション。主にカットオフ(CO)やボタン(BTN)のを指します。(以下の図では「レイトポジション」)
- アウトオブポジション(OOP):相手よりも先にアクションしなければならない不利なポジション。主にブラインド(SB, BB)やアーリーポジション(UTGなど)を指します。

第2章:なぜ有利?ポジションが持つ「2つの魔法の力」
なぜ後からアクションできるだけで、これほどまでに有利になるのでしょうか?
一言で言えば、インポジション(IP)は「相手の出した手をすべて見てから、自分の手を決められる後出しジャンケン」をしているようなものだからです。
その絶大な力は、主に2つの要素に分解できます。
理由①:情報の優位性 (Information Advantage)
ポーカーは不完全情報ゲームですが、IPのプレイヤーは、先にアクションするOOPのプレイヤーよりも多くの情報を得ることができます。 OOPのプレイヤーが「チェックしたのか」「ベットしたのか」「いくらベットしたのか」…そのすべてのアクションを見た後で、自分のアクションを決めることができるのです。

「相手はチェックしたな…弱気な証拠かもしれない。ここはブラフベットでポットを奪おう」
「相手から大きなベットが来たぞ…これは本当に強いハンドを持っていそうだ。自分のハンドは無理せずフォールドしよう」
このように、IPは相手の出方を見てから、より精度の高い判断を下すことができます。ブラフを仕掛けるのも、相手のブラフを見破るのも、情報を多く持つIPが圧倒的に有利なのです。
理由②:エクイティの実現 (Equity Realization)
これは少し専門的な話になりますが、ポジションの力を理解する上で最も重要な概念です。
ポーカーは、自分のハンドが持つ本来の勝率、すなわち「エクイティ」を、いかにして実際のポット獲得(利益)に繋げるかを競うゲームです。 そしてIPのプレイヤーは、このエクイティを非常に実現しやすいのです。
例えば、あなたがフロップでフラッシュドロー(あと1枚でフラッシュが完成する手)を持っているとします。
もしあなたがOOP(先にアクションする側)なら…
あなたはチェックするでしょう。しかし、IPの相手からベットされると、あなたは難しい判断を迫られます。コールするにはまだ役ができておらず、負ければ大損です。多くの場合、あなたはフォールドを選び、フラッシュになる可能性(エクイティ)を諦めるしかありません。
もしあなたがIP(後からアクションする側)なら…
OOPの相手がチェックしてくれました。ここであなたには「タダで次のカードを見る」という最高の選択肢が生まれます。あなたもチェックすることで(チェックバック)、追加のチップを支払うことなく、リバーでフラッシュを完成させるチャンスを得られるのです。 これは、OOPのプレイヤーには決して真似できない、IPだけの特権です。
このように、IPはポットコントロールを自由自在に行い、自分のエクイティを最大限に実現できる一方、相手のエクイティ実現をベットによって阻害することができるのです。
第3章:ポジションを活かした基本戦略
では、このポジションの力をどのように実践に活かせばいいのでしょうか?まずは基本中の基本、「参加するハンドを変える」ことから始めましょう。
ここで突然ですが、あなたに質問です。9人テーブルのUTG(最も不利なポジション)で、手元に配られたのは「A♥9♠」。これは参加すべきハンドでしょうか?
一見すると強そうなハンドですが、答えは「いいえ(参加しない方が賢明)」です。その理由をこれから解説します。
不利なポジション(アーリーポジション:UTGなど)での戦い方
UTG、HJといったアーリーポジション、ミドルポジションでは、自分の後にアクションするプレイヤーが多く、ポストフロップでOOPになる可能性が非常に高いです。そのため、参加するハンドは非常に厳選する必要があります。
なぜなら、
- 後にはまだ多くのプレイヤーが控えており、誰かから3ベット(リレイズ)される可能性が高い
- コールされても、フロップ以降を不利なOOPで戦わなければならない
- より強いA (AK, AQ) を持った相手に「ドミネート」され、大損するリスクがある
といった危険が潜んでいるからです。質問のA♥9♠(A9o)といったハンドは、まさにこのドミネートされる危険性が高いハンドなのです。アーリーポジションでは、このような「強いけど一番ではない」ハンドは潔くフォールドするのが賢明です。
- 参加するハンドの例: AA-TT(強いポケットペア)、AKs, AQs, KQs(強いスーテッドブロードウェイ)、AKoなど。
有利なポジション(レイトポジション:CO, BTN)での戦い方
CO、そして特にBTNは、ポストフロップでIPになれる確率が非常に高い黄金のポジションです。ポジションの優位性を活かせるため、非常に広い範囲のハンドで利益的に参加することができます。 アーリーポジションでは即フォールドだったようなハンドでも、BTNからであれば積極的にレイズして、ブラインドを盗みにいく(スチールする)ことが推奨されます。
- 参加するハンドの例: すべてのポケットペア、すべてのAxs、多くのKxs、スーテッドコネクター(87sなど)、スーテッドギャッパー(T8sなど)、多くのAxoなど。
さらに、IPではフロップ以降も主導権を握りやすいため、
- 相手がチェックしたら、ブラフでポットを奪いに行く(Cベット)
- ドローハンドでも、チェックバックしてフリーカードをもらう
といったように、柔軟な戦い方が可能になります。
第4章:ポジションの罠!初心者がやりがちな3つの間違い
ポジションの重要性を理解したあなたが、次に気をつけるべき「罠」があります。多くの初心者が陥りがちな3つの間違いを知って、無駄な損失を防ぎましょう。
間違い①:BTNだからと何でもかんでも参加してしまう
BTNが最強なのは事実ですが、「どんなハンドでも勝てる魔法の席」ではありません。あまりに弱いハンド(72oなど)で参加しすぎると、ブラインドのプレイヤーからの3ベットに反撃されたり、フロップで全くヒットせずに降りる羽目になったりします。あくまで「他のポジションより広く参加できる」ということを忘れないようにしましょう。
間違い②:OOPなのにプライドで戦ってしまう
UTGからレイズで参加したものの、フロップが良くない…。こんな時、不利なポジション(OOP)にいるにも関わらず、「せっかく強いハンドでレイズしたんだから」と意地になってコールを重ねてしまうのは典型的な負けパターンです。OOPでは「迷ったらフォールド」が鉄則。傷が浅いうちに撤退する勇気を持ちましょう。
間違い③:IPの「チェックバック」という武器を忘れる
有利なポジション(IP)にいると、つい「ベットしてポットを奪おう」と考えがちです。しかし、相手がチェックしてくれた場面で、自分もチェックして「タダで次のカードを見る(フリーカードをもらう)」という選択肢は非常に強力です。特にドローハンドの時など、無理にベットせずチェックバックを有効に使いましょう。
次のプレイで試そう!ポジション意識チェックリスト
- ✅ ゲームが始まる前に、ディーラーボタンの位置を確認したか?
- ✅ UTGやHJにいる時、参加ハンドを厳選できているか?(A9oやQJoをフォールドする勇気)
- ✅ BTNやCOにいる時、ブラインドを盗む「スチール」を狙ってみたか?
- ✅ フロップが開いた後、「自分はIPか?OOPか?」を常に自問自答しているか?
- ✅ OOPで相手からベットされた時、潔くフォールドを選択できたか?
このチェックリストを意識するだけで、あなたのプレイは劇的に変わるはずです。
まとめ:ポーカーは席順が9割!
今回は、ポーカーで勝つために絶対に欠かせない「ポジション」の重要性について解説しました。
- ポーカーの有利・不利は、アクションの順番(=ポジション)で大きく変わる。
- 後からアクションできるIP(インポジション)は、「情報の優位性」と「エクイティの実現しやすさ」という2つの絶大な力を持つ。
- 基本戦略として、不利なポジション(UTGなど)では参加ハンドを絞り、有利なポジション(BTNなど)では積極的に参加することが鉄則。
- ポジションの価値を理解しても、初心者が陥りがちな「3つの罠」に注意する必要がある。
ポーカーで「なぜか勝てない」と感じる原因の多くは、このポジションの有利・不利を理解せずに、どんな席順からでも同じようにプレイしてしまうことにあります。配られた2枚のカードだけを見てプレイするのではなく、常に「自分は今、有利なポジションにいるか?」と自問自答するクセをつけましょう。
それだけで、あなたは無駄なチップの損失を減らし、より多くの利益を得るチャンスを掴むことができるようになるはずです。さあ、次のゲームから早速、ディーラーボタンの位置を意識してプレイしてみてください!