プリフロップで強気にレイズしたものの、フロップが開いた瞬間に頭が真っ白に…。
「このフロップ、ベットすべき? チェックの方が安全?」
「ベットするなら、いくらベットするのが正解なんだろう?」
こんな風に、フロップでのアクションに迷ってしまうのは、あなただけではありません。多くのプレイヤーが、この「フロップの戦い方」でつまずき、利益を逃しています。
しかし、ご安心ください。この記事を読めば、フロップの状況を冷静に分析し、「なぜ」そのアクションを取るべきなのか、GTOに基づいた論理的な判断ができるようになります。
この記事で紹介するGTO(ゲーム理論最適戦略)とは、一言でいえば「相手に付け入る隙を与えない、理論的に最適な打ち方」のこと。難しく聞こえるかもしれませんが、基本の考え方はとてもシンプルなので安心してください。
フロップの「顔つき」である「ボードテクスチャー」を見極めるスキルを身につけ、フロップの勝者になりましょう。
Cベット(コンティニュエーションベット)とは?主導権の継続
まずはおさらいです。Cベットとは、プリフロップで最後にレイズしたプレイヤー(アグレッサー)が、フロップでも続けてベットすることです。
これは、「プリフロップで主張した『自分のハンドは強い』というストーリーを、フロップでも継続する」という非常に強力なアクションです。相手にプレッシャーをかけ、たとえ自分のハンドがフロップに絡んでいなくても、相手をフォールドさせてポットを獲得できる可能性があります。
しかし、最強の武器であるCベットも、使い方を間違えれば諸刃の剣。では、いつ刃を振り下ろし、いつ鞘に収めておくべきなのでしょうか?
【実践編①】静的なボード(ドライボード)のGTO戦略
静的なボードとは、カード同士の数字が離れていて、スートもバラバラ。ストレートやフラッシュになる可能性が低い、乾いた(ドライな)ボードです。(例えばA♥J♦7♠など)ハンドの強弱がターン以降もあまり変わらないため「静的」と呼ばれます。
なぜ有利なのか?:圧倒的なレンジアドバンテージ
あなたがプリフロップでレイズした場合、あなたのハンドレンジにはAやKといったハイカードが多く含まれていると相手は考えます。このボードは、まさにそのあなたのレンジと強く結びついています。一方で、相手がコールしたハンド(例:中程度のポケットペアやスーテッドコネクター)とは絡みにくいボードです。これを「レンジアドバンテージがある」と言い、あなたにとって非常に戦いやすい状況です。
どう戦う?:高頻度でベットする
相手が役を作っている可能性が低いため、Cベットが成功する確率が非常に高いです。GTO戦略では、このようなボードではほぼ100%に近い頻度でCベットを打つことが推奨されます。
ベットサイズは?:大きめのサイズも有効
相手のドローが少ないため、反撃されるリスクが低いです。相手が持っているかもしれないポケットペアなどの「そこそこのハンド」から最大限のバリューを引き出すために、ポットの2/3程度の大きめのベットサイズも有効になります。
【実践編②】動的なボード(ウェットボード)のGTO戦略
動的なボードとは、カードの数字が近く、スートも2枚以上揃っている。ストレートやフラッシュの可能性が豊富で、湿っている(ウェットな)ボードです。(例えば8♥7♥6♠など)ターンやリバーの1枚のカードで、ハンドの強さが劇的に変化するため「動的」と呼ばれます。
なぜ慎重になるべきか?:相手のレンジと絡みやすい
このようなボードは、あなたのレイズにコールしてきた相手のハンドレンジ(例:T9, 54, ポケットペア, スーテッドハンド)と非常に相性が良いです。相手がすでに強い役や非常に強いドローハンドを完成させている可能性が高く、あなたがレンジアドバンテージを持っていない状況です。うかつにベットすると、痛烈なチェックレイズを食らってしまう危険があります。
どう戦う?:Cベット頻度を下げ、チェックを多用する
このような不利なボードでは、Cベットの頻度を大きく下げるのがGTOの考え方です。チェックすることで、相手に先にアクションをさせて情報を得たり、無駄にポットを大きくしてしまうのを防いだり(ポットコントロール)することができます。チェックは決して弱気な選択ではなく、重要な戦略の一つです。
ベットサイズは?:状況に応じて使い分ける
もしベットする場合でも、その目的を明確にする必要があります。例えば、こちらの弱いハンド(エアーなど)でブラフとしてベットする場合は、相手のドローハンドにリスクを与えるために大きめのベットを。逆に、トップペアなど、そこそこの強さのハンドでポットコントロールしたい場合は小さめのベットを選択するなど、より高度な判断が求められます。
【理解度チェック!】練習問題
ここで簡単なクイズです。あなたはプリフロップでBTNからオープンレイズし、BBのプレイヤーがコールしました。フロップが開きましたが、あなたならどう考えますか?
第1問
フロップ: Q♠ 8♣ 3♦
- A. 高頻度でCベットを打つ
- B. 慎重にチェックを検討する
答えと解説を見る
正解はAです。このボードはカードの数字が離れており、スートもバラバラな「静的なボード」です。あなたのレンジに含まれるQxがトップヒットとなり、相手が有利なドローを持っている可能性は低いため、高頻度でCベットを打つのが有効です。
第2問
フロップ: J♥ T♥ 5♣
- A. 高頻度でCベットを打つ
- B. 慎重にチェックを検討する
答えと解説を見る
正解はBです。JとTが連続しており、ハートも2枚あるため、相手がストレートドローやフラッシュドローを持っている可能性が高い「動的なボード」です。このようなボードでは、無闇にCベットを打つのは危険であり、チェックも視野に入れた慎重なプレイが求められます。
【応用編】特殊なボードのGTO戦略
最後に、少し特殊ですが頻出するボードでの考え方を紹介します。
モノトーンボード(A♥ K♥ 7♥など)
同じスートが3枚並んだボードです。あなただけでなく、相手にもフラッシュドローができている可能性が非常に高いです。そのため、相手からのレイズを警戒する必要があります。GTO戦略では、このようなボードではポットの1/3程度の小さなベットが推奨されます。小さなベットで、相手の弱いハンド(ドローを伴わないハンドなど)をフォールドさせつつ、もしレイズされても損失を最小限に抑えるのが狙いです。
ペアボード(K-K-5など)
同じ数字が2枚含まれるボードです。このボードでは、相手がトリップス(スリーカード)を持っている可能性は非常に低いです。そのため、こちらも小さなベット(ミニベット〜1/3ポット)で相手の出方を探るのが有効です。相手の弱いハンドをフォールドさせ、コールされた場合でも相手のレンジをある程度絞り込むことができます。
まとめ:フロップの「顔つき」を読んで戦略を使い分けよう
フロップ戦略の鍵は、「全てのフロップで同じプレイをしない」ことです。今回の要点をまとめましょう。
- 静的なボード(A-K-7rなど)では、あなたは有利。高頻度で、大きめのサイズのCベットを検討しよう。
- 動的なボード(8-7-6sなど)では、相手が有利なことも。Cベットの頻度を下げ、チェックで慎重にプレイすることも覚えよう。
- 特殊なボード(モノトーン、ペアボード)では、小さなベットが有効。リスクを管理しつつ、相手を効率的に攻めよう。
フロップの「顔つき」を読み、それに合わせて戦略を柔軟に変えること。これができれば、あなたはもう初心者ではありません。状況に応じて最適な判断を下せる、思考するプレイヤーへの第一歩です。
さあ、次のハンドでは、ただカードを見るだけでなく、フロップのテクスチャーをじっくりと観察してみてください。きっと、今まで見えなかった新しい景色が広がっているはずです。