フロップでCベットを打ったら、相手にコールされた…。
ポットは一気に膨らみ、4枚目のカード「ターン」が開かれる。
「ここでもう一度ベットすべきか?(ダブルバレル)」
「いや、相手がレイズしてきたらどうしよう…チェックの方が安全か?」
フロップを乗り越えたあなたが次に直面するのは、ポーカーで最も判断が難しく、そして勝敗に直結すると言われる「ターン」でのアクションです。ここでの一手ミスが、それまで有利に進めてきたゲームを台無しにしてしまうことも少なくありません。
しかし、この記事を読めばもう大丈夫。ターンでの判断に明確な「軸」を持つことができます。攻めるべきか、待つべきか。その判断基準をGTO(ゲーム理論最適戦略)の観点から学び、フロップで築いた有利を確実な勝利へと繋げる方法をマスターしましょう。
第1章:なぜターンは難しいのか?フロップとの根本的な違い
ターンでの判断が難しいのには、明確な理由があります。
- ポットが大きくなる:フロップに比べてポットサイズが2倍近くになり、ベット額も大きくなります。ここでの判断ミスは、致命的なダメージに繋がります。
- レンジが狭まる:フロップでのアクションを経て、お互いが持っているハンドの範囲(レンジ)はより狭く、強くなっています。相手が弱いハンドを持っている可能性は低くなっているのです。
- ゲームが激変する:ターンで開かれるたった1枚のカードが、それまでのハンドの力関係を180度変えてしまうことがあります。
【ターン戦略フローチャート】
【ターンカードが開かれた!】
↓
① カードを分析
(オーバーカード? ドロー完成? etc.)
↓
② 有利・不利を判断
(このカードは自分に有利? 相手に有利?)
↓
③ ポジションを確認
(自分はIP? OOP?)
↓
④ アクションを決定
(攻める:ダブルバレル or 守る:ポットコントロール)
この思考の流れを頭に入れておくだけで、ターンでのアクションに一貫性が生まれます。では、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
第2章:ターン戦略の羅針盤!ターンカードを5種類に分類せよ
ターンでの正しいアクションを決めるための第一歩は、「ターンで開かれたカードが、誰にとって有利に働いたか?」を分析することです。ターンカードは、大きく以下の5種類に分類できます。
- ① オーバーカード:フロップのどのカードよりもランクの高いカード(例:フロップがJ-7-2の時にKが落ちる)。プリフロップでレイズしたあなた(アグレッサー)のレンジに有利なカードです。【→ダブルバレルを強く推奨】
- ② フラッシュ完成カード:フロップで2枚あったスートと同じスートのカード(例:フロップが♥2枚の時に♥が落ちる)。相手がドローを完成させた可能性がある危険なカードです。【→チェックでのポットコントロールを推奨】
- ③ ストレート完成カード:フロップのカードと繋がる数字のカード(例:フロップが8-7-2の時に6や9が落ちる)。これも相手に有利に働くことが多いカードです。【→チェックでのポットコントロールを推奨】
- ④ ペアボード化カード:フロップのカードのどれかと同じ数字のカード(例:フロップがK-8-3の時に8が落ちる)。相手のレンジよりも自分のレンジにセットがないかなどを考える必要があります。【→状況によりベットかチェックか判断】
- ⑤ ブランクカード:上記のどれにも当てはまらない、戦況にあまり影響を与えないカード(例:フロップがK-J-7の時に2が落ちる)。フロップでの有利不利が継続しやすいカードです。【→バリューベット or チェックで様子見】
このカード分析を基に、「攻めるべきか」「守るべきか」を判断していきます。
第3章:攻めの一手「ダブルバレル」を打つべき時
ダブルバレルとは、フロップでのCベットに続き、ターンでも連続してベットすることです。これは非常にアグレッシブなアクションで、相手に大きなプレッシャーを与えます。
ダブルバレルを打つべき状況
- ターンカードが自分に有利な時:特に「① オーバーカード」が落ちた時は絶好のチャンスです。相手はあなたのレンジにそのカードが含まれていることを強く警戒し、中途半端なペアをフォールドしてくれる可能性が高まります。
- 相手がドローハンドを持っていると強く推測できる時:フロップがウェットなボード(例:8♥7♥2♠)で、相手がコールしてきた場合。相手にフラッシュドローやストレートドローをタダで追わせないために、高い参加費を要求する(プロテクトする)目的でベットします。
- 自分のハンドが非常に強い(ナッツ級)か、全くのエアー(ブラフ)の時:自分のレンジをポラライズ(二極化)させてベットします。中途半端な強さのハンドではベットせず、最強のハンドでバリューを狙うか、完全なブラフで相手を降ろしにいくかのどちらかに絞ることで、相手の判断を難しくさせます。
第4章:守りの一手「ポットコントロール」という賢い戦略
常に攻めるのがポーカーではありません。時には「チェック」という選択が、最も期待値の高いアクションになることがあります。これは弱気なプレイではなく、損失を管理し、勝利のチャンスをうかがうための積極的な「守り」の戦略です。
チェックでポットコントロールすべき状況
- ターンカードが相手に有利な時:「②フラッシュ完成カード」や「③ストレート完成カード」が落ちた時は危険信号です。ここでうかつにベットすると、相手の完成役にチェックレイズされ、逃げ場のない大きなポットで大ダメージを負うことになります。まずはチェックして相手の出方を見ましょう。
- 自分のハンドが「中途半端な強さ」の時:例えば、フロップでトップペアを作ったものの、キッカーが弱い場合(マージナルハンド)。これ以上ポットを大きくしたくないけれど、ショウダウンまで行って勝ちたい…そんな時にチェックは有効です。相手もチェックしてくれれば、タダでリバーを見ることができます。
- 相手を罠にかけたい時(トラップ):あなたがターンでナッツ級の役を完成させたとします。ここでベットするのではなく、あえてチェックすることで、相手に「自分は強くない」と見せかけ、リバーでのブラフを誘う高等戦術です。
第5章:IPとOOPで全く違う!ターン戦略の最終調整
これまで解説してきた判断基準は、あなたのポジションによって使い分ける必要があります。
- インポジション(IP)の場合:あなたは常に相手のアクションを見てから判断できます。これは絶大なアドバンテージです。相手がチェックした場合、あなたはリスクゼロで「チェックバック」を選択し、ポットコントロールを完璧に行うことができます。ダブルバレルを打つかどうかの判断も、より多くの情報を持って下せるため、非常に有利です。
- アウトオブポジション(OOP)の場合:あなたは常に先にアクションしなければならず、不利です。あなたがチェックすると、IPの相手に「ベットするか、チェックバックしてフリーカードをもらうか」という有利な選択肢を与えてしまいます。そのため、OOPではより慎重な判断が求められます。時には、相手のCベットを待たずに先にベットする「ドンクベット」のような、意表を突くプレイも必要になることがあります。
実践編:ケーススタディで学ぶターンの思考法
理論を学んだところで、実際のハンドで思考プロセスを追体験してみましょう。あなたならどうしますか?
【状況設定】
・9人テーブル、あなたはBTN(ボタン)でハンドは A♥K♥。
・あなたがオープンレイズし、BBのプレイヤーだけがコール。
・フロップは K♠ 8♦ 3♥。
・BBがチェックし、あなたはCベット。BBはコールしました。
・ポットにはチップが溜まっています。そして運命のターンカードが…
ケース1:ターンで Q♠ が落ちた場合
これは「① オーバーカード」です。あなたのレンジ(AK, AQ, KQなど)に非常に有利なカードであり、BBのレンジにはあまり含まれません。あなたはトップペア・トップキッカーという強い役を持っています。ここは絶好のダブルバレルのチャンスです。相手の弱いKxや8xからさらにバリューを引き出し、AJやATのようなハンドを降ろしにいきましょう。
ケース2:ターンで 7♥ が落ちた場合
これは「② フラッシュ完成カード」であり、フロップのボードと合わせてフラッシュドローも生まれる非常に危険なカードです。相手が♥持ちのハンド(例: Q♥J♥, 9♥T♥, 6♥5♥)でコールしていた場合、あなたはすでに負けている可能性があります。ここでベットするのはリスクが高すぎます。あなたはIP(インポジション)なので、まずはチェックバックしてポットをコントロールし、相手の出方を見るのが賢明です。
ケース3:ターンで 2♣ が落ちた場合
これは「⑤ ブランクカード」です。戦況にほぼ影響を与えません。フロップでの有利は継続しています。ここでもダブルバレルを打ってバリューを狙うのが基本となります。相手が8xやドローハンドでコールしていた場合、このベットでフォールドしてくれる可能性もあります。
まとめ:ターンを制する者がポットを制す
複雑に見えるターンの戦い方も、基本的な判断軸さえ持っていれば怖くありません。今回の内容をまとめましょう。
- ターン戦略の第一歩は、ターンカードが誰に有利かを見極めること。
- 自分に有利なカードが落ちたら、攻めの「ダブルバレル」を検討する。
- 相手に有利なカードや、自分のハンドが中途半端な場合は、守りの「ポットコントロール(チェック)」を恐れない。
- 常にポジション(IPかOOPか)を意識し、戦略を最終調整する。
ターンでのプレイは、あなたのアグレッシブさと冷静さの両方が試される、ポーカーの醍醐味が詰まったストリートです。フロップでCベットを打った後、思考停止で次のアクションを決めるのではなく、一度立ち止まってターンカードの意味を考えてみてください。その一瞬の思考が、あなたの収支を大きくプラスに変えてくれるはずです。
ターンでの思考の軸が固まったあなたが次に学ぶべきは、最終ストリートである「リバーでの戦い方」です。相手から最大限のバリューを引き出すベットや、渾身のブラフを見抜くブラフキャッチなど、ポーカーのクライマックスを制する戦略を学びましょう。(※リバー戦略の記事への内部リンク)
【発展編】相手のダブルバレルにどう立ち向かう?
自分がコールする側で、相手からダブルバレルを打たれたらどうすれば良いでしょうか?全てをフォールドする必要はありません。
- 相手に有利なカード(オーバーカードなど)でのダブルバレル → ブラフの可能性も高いと読み、自分のハンド(トップペアなど)が十分強ければコールも検討。
- ボードにドローが多い状況 → 相手はプロテクトベットの可能性が高い。自分のドローが強ければコールし、リバーでの逆転を狙う。
相手の立場を考えることで、自分の戦略にも深みが出ます。