「このフラッシュドロー、コールすべきか迷う…」
「強いハンドだと思ったのに、バッドビート(有利な状況からの不運な逆転負け)をくらって大損してしまった…自分のプレイは間違っていたんだろうか?」
ポーカーをプレイしていると、このような判断に迷う場面や、結果に一喜一憂してしまうことが頻繁にありますよね。目の前のハンドで勝つか負けるか、そればかりに気を取られてしまうのは、多くのプレイヤーが通る道です。
しかし、ポーカーで長期的に勝ち続けているプレイヤーは、まったく別の次元で物事を考えています。それが「期待値(EV: Expected Value)」という考え方です。
この記事を読めば、以下のメリットがあります。
- 運に左右されない、ポーカーにおける「正しい判断基準」が身につく
- 短期的な勝ち負けに一喜一憂しなくなり、メンタルが安定する
- なぜそのプレイが得なのかを論理的に理解できるようになり、迷いがなくなる
「期待値」と聞くと数学的で難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です。この記事では、ポーカーで勝つための「期待値」の本質を、誰にでも分かるように、やさしく解説します。
期待値(EV)とは?
期待値(EV)とは、すごくシンプルに言うと、「ある選択をしたときに、長い目で見て平均していくら儲かるか(または損するか)を示す数値」のことです。 ポーカーは一回一回の勝負ではなく、この期待値が高いプレイをどれだけ積み重ねられるかで、最終的な収支が決まるゲームなのです。
例えば、あなたは友人とこんなゲームをするとします。
「参加費1,000円でコイントスをして、表が出たら2,000円がもらえ、裏が出たら何ももらえない(参加費は没収)」
このゲームの期待値は、以下のようになります。
(もらえる金額 × 勝つ確率) - (失う金額 × 負ける確率) = 期待値
(1,000円 × 50%) - (1,000円 × 50%) = 500円 - 500円 = 0円
このゲームの期待値は「0円」です。つまり、何回やっても長期的にはプラスマイナスゼロになる、ということです。これをポーカー用語で「ブレークイーブン」なプレイと言います。
ポーカーの場面で考えてみよう!
では、これを実際のポーカーの場面に当てはめてみましょう。
- 状況:リバー(最後の共通カードが開かれた後)
- ポット:10,000点
- 相手のアクション:5,000点のオールイン(手持ちのチップを全て賭けること)
- あなたの選択:コール(5,000点必要)かフォールド
このコールが長期的に見て得なのか損なのか、期待値を計算してみましょう。その前に、計算に使う項目をはっきりさせておきます。
勝った場合のリターン(儲け)は?
このコールに勝てば、もともとポットにある10,000点に加えて、相手がベットした5,000点も獲得できます。合計15,000点が、この勝負に勝つことで得られるリターンです。
負けた場合のリスク(損失)は?
ここで重要なのは、「すでにポットに入れたチップは、もうあなたのものではない」という考え方です。この勝負であなたが失う可能性があるのは、これからコールするために出す5,000点だけです。フォールドすれば、この5,000点は失わずに済みますからね。
さて、準備ができました。計算を進めましょう。
ここでは仮に、あなたの勝率が相手のハンドに対して40%だとします。
勝率は40%、つまり敗率は60%です。これを式に当てはめると…
(リターン × 勝率) - (リスク × 敗率) = 期待値
(15,000点 × 40%) - (5,000点 × 60%) = 6,000点 - 3,000点 = +3,000点
このコールの期待値は「+3,000点」です。つまり、このコールは、成功しようが失敗しようが、同じ状況を繰り返せば1回あたり平均して3,000点ずつチップが増えていく、非常においしいプレイ(+EVのプレイ)だということがわかります。
最も安全な選択肢「フォールド」
ここで重要なことを一つ。フォールドの期待値は、常に「0」です。 なぜなら、フォールドすれば、それ以上チップを失うリスクも、得るリターンもないからです。
つまり、コールやレイズといったアクションの期待値が少しでもマイナス(-EV)だと判断した場合、期待値が「0」であるフォールドが、その状況で最も期待値の高い、つまり最善の選択になるのです。
なぜ期待値で考えることが重要なのか?
1. 感覚ではなく「論理」で判断できるようになる
「なんとなく勝てそう」「ここは引けなさそう」といった曖昧な感覚に頼ったプレイは、安定した勝利にはつながりません。期待値という「ものさし」を持つことで、どんな状況でも「このプレイは長期的には得か?損か?」という一貫した基準で、論理的な判断を下せるようになります。
2. 結果に一喜一憂しなくなる(ティルトを防ぐ)
期待値の考え方が身につくと、たとえ+EVの正しいプレイをして負けても、それは「仕方のない結果」だと割り切れるようになります。 正しい判断をした自分を褒めることはあっても、結果に対して腹を立てて冷静さを失う(ティルトする)ことが格段に減るでしょう。これは、ポーカーで勝ち続ける上で非常に重要なメンタルスキルです。
3. 小さな利益を大きな勝利に変える
ポーカーのプロたちは、毎回大きなポットを獲得しているわけではありません。彼らは、+EVとなる小さなプレイを、何百、何千回と根気強く積み重ねることで、長期的に大きな利益を生み出しているのです。 期待値の考え方は、その小さな利益を見逃さず、着実に勝利を積み重ねるための羅針盤となります。
フラッシュドローの場合は?
さて、冒頭で「フラッシュドローで迷う」という悩みを挙げましたが、今回の例はリバーでの完成したハンド同士の戦いでした。フラッシュドローのような「未完成のハンド」で期待値を考える場合は、もう少し複雑な「ポットオッズ」や「インプライドオッズ」といった考え方が必要になります。
しかし、安心してください。これらの考え方の根底にあるのも、すべて今回学んだ「期待値」です。基本は同じなのです。これらについても、今後の記事で一つずつ丁寧に解説していきますね。
まとめ:今日から始める「期待値思考」3ステップ!
ポーカーは、一回のハンドで勝つゲームではありません。期待値(EV)の高い選択を繰り返し、長期的な利益を最大化するゲームです。
今日からあなたも「期待値思考」を始めるために、以下の3ステップを試してみてください。
- ステップ1:まずは自問自答から!
プレイ中に判断に迷ったら、「これは長い目で見て得かな?」と心の中で問いかけるクセをつけましょう。計算はできなくて全く問題ありません。 - ステップ2:1ハンドだけ振り返る
プレイが終わった後、その日一番印象に残ったハンドを一つだけ思い出してみてください。「あの時のコールは、プラスの期待値だっただろうか?」と考えてみるだけで、素晴らしい練習になります。 - ステップ3:次の知識をインプットする
期待値の考え方に慣れてきたら、次のステップである「ポットオッズ」について学んでみましょう。簡単な勝率計算ができるようになり、あなたのプレイはさらにレベルアップするはずです!
期待値を意識することが、ポーカーで勝ち続けるための、最も確実で、最も重要な第一歩なのです。